●イベントCG+サンプルシナリオ


【瑞姫】「そっか、十三くんも大変なのね」

【十三】「まあ、そっちほどしつけは厳しくないけどさ。人にお茶をおごるくらいなら、こづかいももらってるし」

そう言って、少し意地悪な笑みを浮かべる。

【瑞姫】「なんか嫌味な言い方。ジャムパンあげたじゃない」

瑞姫は唇を尖らせ、文句を言う。その手には、もうアンパンはない。

【瑞姫】「それともわたしのジャムパンじゃ不服ってわけ?」

【十三】「別に、そういうわけじゃないけどさ」


苦笑し、十三も最後のひとかけを口に入れた。よく噛んで、ごくりと飲み込む。

【瑞姫】「やっぱ、なんか不満そうね」

ジト目で睨まれた十三は、お茶を飲んで目線を逸らす。

【瑞姫】「あ、そうだ。ちょっとあっち向いて」

何かを思いついたのか、瑞姫が悪戯っぽい表情を浮かべて公園の一角を指差した。意図が読めずに、十三はそちらへ視線を向ける。

【十三】「なんだよ、なんにもいないじゃない――」

そして、次の瞬間。

【瑞姫】「んっ……」

温かい吐息が、頬に触れた。

やわらかい感触。

まるで全身に電撃が走ったかのように十三はびくりとなり、直後に硬直する。

鼻孔をくすぐる、甘やかな瑞姫の匂い。

さらさらとこぼれた長い髪が、十三の頬をくすぐる。

時が――止まったような気が、した。

けれどそんな時間は長くは続かず、やわらかい感触と温かな吐息はゆっくりと離れてゆく。

それが、どうにも名残惜しかった。

【瑞姫】「これでいいかしら、速水十三くん?」

【十三】「え……あ」


からかうような瑞姫の口調に、ゆっくりと現実へと戻ってきた。思わず頬に手を当ててしまう。

今のは、いったいなんだったのだろう。

【瑞姫】「顔、真っ赤よ?」


【十三】「な、なな、ななななっ!?」


ようやく事態を理解して、十三は混乱した。今頬に触れたのは、そう。

【十三】「な、なんてことするんだよ!?」

【瑞姫】「感謝の印」

対して瑞姫は事も無げに答える。狼狽している自分がおかしいとでも言うように。

【十三】「え――ていうか、なんでそんなに平然としてるんだ?」

【瑞姫】「別に、その程度で恥ずかしがる必要もないでしょ?」

【十三】「そうなの、か?」

【瑞姫】「そうよ?」

そうらしい。最近はずいぶんと日本もオープンになっているようだ。釈然としないまま黙り込む十三。

これは、さすがに初めての経験だった。それも本性を知ってしまったとはいえ、学園のアイドルとまで称された女の子からのキスとなれば、動揺しないはずがない。

ずいぶん、顔が熱かった。誰も公園にはいないというのに恥ずかしい。なんだか視線を感じるような気もする。

おそらくは、隣で楽しげな顔をして十三を見ている瑞姫のものだろうが。

【瑞姫】「ふふ」

【十三】「な、なんだよ」

【瑞姫】「別に。こういうの、楽しいなぁって」

その一言に、毒気を抜かれてしまう。

いままで、こんな風に過ごせる相手はいなかったのだろうか。

確かに、瑞姫に彼氏がいるという話は聞いたことがない。それどころか取り巻きは多くとも、本当の友達もいないようだった。

凛としたお嬢様よりも、屈託なく笑ういまの瑞姫こそが本当の姿なのだと、十三は理解する。

そしてそんな彼女を知ることができた幸運に、十三は感謝したかった。

 


 
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